2011-01-01から1年間の記事一覧

地方都市の発展と立地

はじめに 伊那谷の3都市の立地条件はそれぞれ異なり、それによって都市の盛衰が相違している。伊那谷の地形の特徴として天龍川による河岸段丘地形が挙げられる。伊那谷の3都市は飯田、駒ヶ根、伊那市である。市街が河岸段丘の崖上台地に位置しているのが、…

吉良先生の自然保護論

はじめに 吉良先生が逝去されたことをツウィッターで知った。多くの弟子の方々は嘆かれていることだろう。学生の頃より、吉良先生が密度理論の発見者で、その論文がいかに短いものであったことは学生間で語られていた。後に、四手井先生が森林の密度効果に適…

嵐の風景・平穏な風景

はじめに 日常の風景に目を留めることは、イギリスの風景画家コンスタブルの風景画の追求が示し、フランスのバルビゾン派の画家達に影響を与えたことが指摘されている。風景画家としてターナーはコンスタブルによりも著名であったかもしれないが、何故、フラ…

駒ヶ根市における景観計画の成熟

はじめに 景観行政団体を目指す都市が徐々に増大している。景観行政の実行を独自に展開する要求が増大していることがその背景にあるのだろう。上伊那では駒ヶ根市、伊那市が景観行政団体を目指している。景観行政団体となれば、景観基本計画を独自に作り、そ…

林間園地の持続

はじめに 林間園地にも様々なタイプがある。人工的な花壇、芝生広場、野草園、萩園、アジサイ園、そのほかの花木園、湿地園などが生駒の府民の森に見出される。これらの園地が園路の見どころの拠点となっている。しかし、草本や潅木の園地を持続するには管理…

コナラ林の林床と森林遷移

はじめに 裸地が草原となり、草原が森林となり、その森林はアカマツなどの林が落葉広葉樹林となり、落葉樹から照葉樹林や針広混淆林となって、終局相に到達する。この定説に従って、林床を見ていくと、林床は草原の残存であったり、次代の森林の先駆であった…

アルプス公園花の丘のササユリ

はじめに アルプス公園の花の丘は、アルプス公園の拡張計画に際して、自然環境の保護と開発の論議の中で、開発区域として人工的に作られた野草園の丘であった。しかし、野草の植栽は芝生の中に花壇を造って植えられており、公園管理では手入れが出来ないため…

山村の変遷

はじめに 福島原発の影響によって避難を余儀なくされている多くの人々にとって、避難先と新たな生活の開拓地が求められている。私は25年前に長野県地方自治研究センターの観光開発問題の調査に加わり、県内各地の自治体をめぐり歩いたことがある。5つの自…

地表は生命の緑で覆われる

はじめに 小さな中庭はわずかな陽光で生命を感じさせなくなっていた。雑草が侵入し、子供たちが踏み荒らして、裸地となってしまったからである。配置した石は地面から浮き上がり、無意味に配置されているようになった。小さな中庭は砂場と化して、石は格好の…

日常生活の景観変化

はじめに 日常生活の景観はその時々の時間の中で、一定の場所から知覚される空間であるが、その景観を成立させている全体的空間は変化しないことを個人のレベルでは前提としている。空間を変化させるのは、自然か人間かであり、人間を中心に構成された空間で…

地域景観の形成

はじめに 景観が地表面の状態を表す地理学の概念として、現在はgoogle-earthで地球の景観を日常的に見出している。これに対して、身近な地域の景観は本来、日常的に知覚されているのに、地域全体を見渡す眺望の機会が少なくなると、行動の断片的な眺めに拡散…

薫風

はじめに 窓を開けると、風に当たって何か良い匂いを嗅ぐことが出来た。どこにその匂いの元があるのかと探してみるが、近くには見当たらない。花の匂いだとしても、何かの花の匂いというよりは、色々な香りがが混在して、特別な香りを放っているようである。…

広葉樹と針葉樹の樹形構成

はじめに 小根山見本林でケヤキ林の施業地を見たことがある。20数年後に行くと成長が悪く、弱っている木が多かった。ケヤキは段丘崖や山裾、神社、屋敷林で大木をなして見る事が多いので、有用性があり、自然に生育するとともに植えられてもいるのだろう。ケ…

中央新幹線小委員会の権力

中央新幹線小委員会の答申案へのパブリックコメントを提出した立場として、5月12日に小委員会の委員長の提出した答申書は、多く答申案への反対のパブリックコメントを一蹴し、民主主義国家とは考えられず、委員会委員の権力者意識を見出す。権力者であるな…

友人の難問

はじめに 友人は京都人であり、京都の庭師の家に生まれた職人の子孫である。京都の街とその歴史は人格なり、思考方法に独自のものを生み出しているように思うのは、友人によってである。友人は地上の森は一つにつながった生態系であることを確信して、論を生…

森林の成長と遷移

はじめに 私たちは、戦後、草地から森林への劇的な変化を各地で経験した。ススキ草原はアカマツ林となり、アカマツ林はコナラ林へと典型的な植生遷移が進んだところも多いであろう。今後、山地帯では、モミ、ツガなどの針葉樹を構成した広葉樹の混淆林へと遷…

風景から森林の知覚

はじめに この晴れた日に町を見渡す眺望は、風景と言ってよいだろう。町の上方に高い空があり、地平線には、新緑の山々が連なっている。山々に囲まれた盆地の平野、その平野を覆う農地と集落や町を一目で見渡す。程よい樹林とともに、高台の住宅がこの盆地せ…

リニアによる中央新幹線答申案へのパブリックコメント

はじめに 5月5日までに中央新幹線小委員会答申案(超伝導リニアによる中央新幹線)にパブリックコメントが求められている。答申案を何日も前から眺めているが、何故、現在、莫大な費用が「かかる中央新幹線への着手が必要なのか?何故、中央新幹線はリニアで…

森林資源に依存する生活

はじめに 森林に依存した生活は、縄文時代の狩猟採取の時代に見出されると考えられる。明治以前のアイヌの人々の生活から縄文時代の生活を想像できるかもしれない。農耕が開始されても、以前の自然依存の生活が継承されていたであろう。支配階級の成立と物資…

複雑な森林と単純な森林

はじめに 森林が多様であり、構造が複雑なことは、自明なことのようだが、実際に複雑な森林もあれば単純な森林もある。複雑な森林でも雑然として感じられる森林があり、藪の雑然さが嫌われるために、林床が刈り払われ、単調となった森林も見かけられる。人工…

山地と海岸の交流

はじめに 災害の跡の姿に、亡くなった方々、被害を受けた方々に言葉にならない悲しみを感じる。自然の災害の猛威に、自然がどれだけ人々を守ってくれているのか、の信頼が揺らいでしまう。自然の恵みと災害の被害は裏腹の関係にあったのだろうか、人間は自然…

災害と日本風景論

はじめに 今回の大災害は、地震と津波によるものであり、建物の倒壊と火災、津波の逆流に押し流されて史上に残るものとなった。火山の噴火、台風と日本は自然災害の多い国である。山地、海岸や河岸、低地、火山の裾野と様々な危険な場所がある。人々の生活域…

これからの森林美学

はじめに 大災害の悲惨さとともに、原子力発電所の事故は、これまでの日常生活を一変させた。災害当初は、被災地とは異なる何か変わらぬ日常生活に違和感を感じていたが、災害の状況が知られるにつれて、現実感を増してきている。原子力発電所の事故はこれま…

原子力発電とリニア中央新幹線

はじめに 3月27日に名古屋で「リニア中央新幹線は必要か(シンポジウム)」が開かれ、大鹿村の南アルプスの自然を守る会の事務局が出席した。そして、次のようなメールがあった。「このメールは今回の福島原発事故に対して私達、リニア計画と浜岡原発中止を…

都市住民の流亡

はじめに 経済の停滞とともに、多くの企業が倒産し、人々の職場が喪失していく。都市空間を構成する商店と商店街は、消費者の消費によって成立しているが、消費の縮小、都市に出かける人の減少によって商店街の衰退が進行している。都市空間の拡散は、華やか…

放置林育成への復興需要の影響

はじめに 放置林に対する施業は、長野県において「民有林で実施された間伐のうち約8割がが切り捨てで、間伐利用の活用は進んでいない」との新聞記事を見て、何とも残念なことである。今後、東日本大震災の復興が進行していくことになっており、木材需要も増…

塩尻下西条緑の会とウラジロモミの樹叢

はじめに 塩尻市下西条の緑の会では、毎年、数回の裏山の手入れを行っている。今年最初の作業の呼びかけに、出て行った。行って見なければ、どんな作業があるかわからない。セツブンソウ、福寿草が咲いていることも楽しみである。でかけると、20数人の人々が…

雑木林の再生

はじめに 武蔵野の雑木林は国木田独歩によって世に親しまれるものとなった。雑木林は農家の薪炭生産のために作られたもので、明治以降の東京近郊の農林業の展開の中で生み出されてきたものであることは地理学の課題にもなった。都市の発展は、当時の暖房に膨…

森林美学の再生

はじめに フォン・ザーリッシュの森林美学は、時代的に、ドイツ帝国の成立(1871)と第一次世界大戦の間を背景に著され、流布し、メーラーの恒続林思想へと受け継がれたといえる。しかし、第一次世界大戦(1914−18)は森林美学の展開に大きな障壁となったこと…

公園林施業の計画

はじめに 公園内の森林を管理する上で、広大な区域を毎年、全域を見てまわって、管理することは困難である。その結果、利用区域に接して、目に付き、問題となる箇所だけの応急処置に終始することになるのではあるまいか。 森林で問題となる点は、倒木、枯枝…