2010-01-01から1年間の記事一覧

放棄桑畑の森林回復

はじめに 旧八坂村の放棄桑畑の森林回復にK氏が取り組んでいると、S氏に連れられて出かけきた。クズに被われた桑畑で桑が枯れている姿に、クズの猛威を感じた。山村の生業に養蚕業が栄えたのは明治になってからであろう。山地を桑畑に開墾し、山村も新たな経…

ゴミ焼却処理場の建設位置を巡る論議

はじめに 長野県下の各広域連合地域でゴミ焼却処理施設の建設が課題となっている。2年前に関わった位置選定の検討委員会に関して、新聞記者から検討項目に関する問い合わせが会った。ゴミ焼却処理施設の建設の検討庫目に住民の合意形成を加えなかったのは、…

地域景観協議会

はじめに 景観法の施行とともに、地域に景観協議会が発足した。3年前のことである。協議会の主幹は各地方事務所の住宅課である。長野県の景観行政は冬季オリンピック、長野開催を契機にはじまった。すでに、バブル経済が終焉した時期で、期待された観光産業…

庭空間における植物の力

はじめに マンション中庭の植栽が進み、地面が植物で覆われてきた。裸地は殆ど目立たなくなった。ジャノヒゲ、ギボシ、ユキノシタ、オシダも生育し、自然に見えるようになり、配置された岩石と調和するようになった。植えたもの以上に元からあるシダやコケが…

森林の将来像

はじめに 将来予測は、人口や資源、経済、地球環境などを日々、目にしている。その予測から現在の政策が根拠づけられる。現在の政策は、予測だけではなく、希望的な将来が含まれる。現在のあるべきという希望は理想である。人類の将来像を描くことは、予測に…

森林づくり指針

はじめに 長野県ふるさとの森林づくり条例が施行されたのは、平成17年1月1日からである。その眼目は「木材生産機能を軸とした林業政策」から「森林の多面的機能の持続的な機能の持続的な発揮を目指す森づくり」へ転換するとのことである。現在、森林づくりの…

林床の進化

はじめに 森林の林床は上層の樹木の状態によって変化する。上層の樹木の成長は林内環境の日照と風力、湿度を変化させ、その林内環境の変化はそこで、生育する植物の種類を変化させる。林内植物の生育条件には土壌の変化も作用するが、土壌の条件は植物の生育…

マンション中庭の造園

石組みと植栽 石組みには砂、コケが似合う。いずれも、地面を低く被覆して、石組みを際立たせるからである。中庭は日照に不足し、土壌が貧困であったためか、コケが生育していた。また、柱を雨が伝って落ちるところは、侵食されて裸地となっている。しかし、…

経ヶ岳自然植物園

はじめに 経ヶ岳山麓の集落の地誌を作っている方から突然、電話があった。経ヶ岳自然植物園の森林の変遷を記した看板の文章を地誌に掲載したいということであった。 経ヶ岳植物園は伊那市が昭和25年の講和記念の公園として設置されたものであった。当時は庭…

廃園の風景

はじめに 廃園について、もう筆者も題名を忘れたが、小説か随筆を読んだことを思い出す。両親が無くなり、住人のいなくなった家に帰郷して、庭園の手入れを始める男の話である。筆者自身の体験のようであったが、手入れした庭園が、筆者を束縛して、自由が奪…

街路樹の緑地効果

はじめに 市街地における街路は車の通行とともに、アスファルトは太陽で熱せられて、目もくらむ暑さとなっている。街路に沿って設けられた歩道に植栽された街路樹は多少とも、この街路の環境を和らげている。しかし、街路樹は疎らで、樹冠は小さくて、まだ、…

樹木空間

はじめに 空間は単なる広がりではあるが、建築空間では居住のために天井、壁、床を作って、囲われた空間を作り出す。また、建築物の集合によって生まれる都市空間は、街路や広場に面して建築の外観が並び、街路の壁面を構成して街路空間によって構成される。…

松本市街の田園都市構造

はじめに 近代的な都市計画は、ハワードの田園都市論に出発点があるとされる。それに続く近隣住区論とともに、現代の都市計画手法として生かされている。日本にも戦前からそれらの影響による住宅地の形成も見られる。しかし、大都市の発展は無計画であり、無…

森林の多面的な機能から生態系サービスへの環境危機

はじめに 森林の効用、機能は以前より言われており、その機能を発揮させるために、森林法制定の当初から、保安林制度が設定されている。天然林を開発し、人工林に転換させ、あるいは、森林を喪失することによって、森林の果たしていた機能が喪失して著しい生…

生駒山系の緑化と景観変化

はじめに 1967年、生駒山系緑化対策の研究が進められ、取り組んでいた。先日、S氏が訪れ、現在の状況の一端を話してくれた。四十数年の内に、生駒山系の森林はすっかり変わったようである。s氏は大阪側から生駒山系が花屏風のように見えることがあるという…

北九州若松の風景

はじめに 北九州市若松は母の実家のある町である。5つの都市が合併して北九州市若松区となった。洞海湾に面して対岸は戸畑区となっている。小さな頃から母の実家を訪ねて若松を訪れると、戸畑駅を降りて、洞海湾を渡し船でわたって若松に到着した。波止場に…

小さな自治体

はじめに 数年前に、自治体の経済的困窮のために広域合併が各所で勧められた。上伊那地域では長谷村と高遠町が伊那市に合併した。長谷村の人口は2000人台で、伊那市の地区人口の規模であったが、戦後の町村合併以降、独立した自治体として持続してきた。南ア…

風景の背景と前景

はじめに 梅雨明けとともに夏空が広がり、青空の雲が自由な模様を描いている。夕日に入道雲が立体的となって、あたかも空の主役のように目立とうとしている。雲は空に奥行きを与え、一様な青空を背景として白い雲は空の主役である。しかし、地上と空は隔絶す…

日本風景論からの脱却

はじめに ヨーロッパにおいては、ルネッサンスにおいて風景は発見されたものといわれる。中世から近代への転換点となるルネッサンスに登場した風景は、近代の条件と結合しているといえる。それゆえに、日本も含め、後進国の近代化は風景の知覚を広めることに…

風景視点または風景のまなざし

はじめに 西田氏が風景視点の転換に関して、論陣を展開していることを、環境研究に掲載された「新たな風景視点」を読んでわかった。近代の風景知覚がロマン主義の思潮などに基づく一定の知覚方法であることは認められてきているが、西田氏の現代の多元的な世…

地域計画と流域管理

はじめに 大学に入学した年は、安保改定をめぐり、学生のストライキとデモなどのため、講義の受講も出来ない状態であった。新入生も政治運動に目覚めて、デモにも参加することになった。岸内閣の退陣と池田内閣の成立は、こうした政治的混乱を収束させ、所得…

森林浴の成立

はじめに 森林浴という言葉は、造語であるにも関わらず、相当一般化している。木曾赤沢の自然休養林で、当時の林野庁長官の秋山氏が森林の自然休養を「森林浴」と称したことによるとされている。森林浴は海水浴に類している。また、温泉浴にも類している。英…

風景における森林風景

はじめに 風景は作ることが出来ない。地域における人の営みが生み出したものであり、それを知覚したときに風景を意識するものである。柳田國男は風景の成長でもって、農民の営みが作り出した風景を単純に楽しむ都会人を批判した。造園はランドスケープ・アー…

園芸と造園

はじめに 日本における造園と園芸の乖離は明治からあったようである。あるいは江戸時代から存在していたのであろうか。日本庭園には、ほとんど園芸の植物は使われておらず、西洋庭園が洋式生活とともに、導入され、西洋の園芸植物も導入されてきた。西洋庭園…

信州の川端ヤナギ

はじめに 川端柳といえば枝垂れ柳に決まっている。江戸や堺の堀端には枝垂れ柳が植えられ、川柳を楽しむ人がいたのであろうか。しかし、信州の川端柳は枝垂れてはいない。川原に自然に生えてくる柳である。松本の街中に女鳥羽川が流れているが、その川中の堆…

森林風致のための中庭デザイン

はじめに 森林風致計画研究所の総会があり、会員が集まり、幾人かが事務所に泊まった。事務所のあるマンションの中庭の再整備の案が検討中であるので、2人の会員の造園と土壌生物の専門家に見てもらった。 中庭は3階の建物に3方を囲まれ、日差しが僅かし…

森林療法の専門性

はじめに 森林技術NO.819(2010.6)の論壇に、U氏が「森林療法とは何か」の表題で論説している。森林療法の対象は健常者 罹病者 障害者であり、その目的はリハビリテーション、風致作用の享受、心理的な癒し 作業療法 環境形成であり、その森林の場所、時間…

木材生産の手作業と機械の力

はじめに 製材工場を見て改めて機械の力を再認識した。北斎の富岳百景の一画面に大木の丸太を鋸でひいている職人の姿が描かれている。どれほどの時間がかかるのかと感心する。木を切り倒すには斧と鋸であったのはごく近年まで古代からの技術であり、石器の原…

ノイバラの香り

はじめに バラが沢山売り出されて、多くの人が自分の庭を飾るために満足げに買っていく。様々な種類、大小の栽培されたバラはあまりにも多くの種類があり、価格も様々である。イギリスの由緒正しいバラから、ただ、華やかなバラまであるので、高価なものはそ…

村落共同体と入会地・コモンズ

はじめに コモンズという言葉が流行した時期があるが、今はほとんど言われることがない。ウィッキペディアではコモンズは入会または入会地を指している。グレアム・マーフィ:「ナショナル・トラストの誕生」では、ナショナル・トラストを発足させた3人の内…